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又吉直樹『火花』感想。神谷さんに、私はなれない。
読み終えて、しばらく神谷さんのことを考えていました。
あらすじ(ネタバレなし)
売れない若手芸人の徳永は、ある花火大会の夜に天才肌の先輩芸人・神谷と出会う。独自の美学と哲学を持ち、借金を抱えながらもそれを貫き続ける神谷に惹かれた徳永は、「俺の伝記を書いてくれ」という奇妙な依頼を引き受ける。
お笑いの世界に生きる二人の、数年にわたる物語。
神谷さんという人間
この本の核は、神谷という人間だと思う。
誰にも理解されないような独自の思想を持ちながら、現実がそれに追いついていなくても、借金があっても、好きな人との関係が終わっても、ブレない。最初から最後まで、一ミリもブレなかった。
純粋すぎるがゆえに、生活も人間関係もどんどん破綻していく。でもその分、ぶっ飛んだところまで行ける。羨ましくもあり、怖くもあります。
私は主人公サイドの人間だと思った
読みながら気づいたのが、私は完全に徳永サイドの人間だということ。
何かを好きになる前に、まず「検問」を通してしまう。マイナス面を探して、一歩引いて、適正な距離でしか楽しめない。現実での孤独、借金、好きな相手との関係の終わりを抱えても尚、独自の思想とこだわりを貫いて生きることが私にはできない。
多少ダメな方に寄ってしまっても、神谷さんが持っているような爆発力は私にはなにがあっても出せない。
神谷さんが持っている、あの情熱や真っすぐさや純粋さ。
自分にはないものだから、余計に印象に残るんだと思う。
人間らしいのか、逆に人間らしくないのか。読み終わってもよくわからないままだけど、それがこの小説の面白さでもありました。
「生きている限り、バッドエンドはない」
作中のこの言葉が、ずっと頭に残っている。
絶望的な状況でも、それを「フリ」にして笑いに変えようとする執念。それが神谷さんという人間だ。かっこいいと思った。
私には到底できないけれど、ああいう生き方をしている人間がいることを知っているだけで、なんか少し、世界が広く感じる気がした。
最後に
芸人さんが書いた純文学、というと身構える人もいるかもしれないけど、全然そんなことはないと思う。私も特に芸人界隈に詳しくはない。それでも心に残った。
神谷さんという人間を一度でも好きになってしまうと、最後まで目が離せない。読み終えた後、しばらく余韻が続く一冊でした。

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