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この作品について知人と話していた際、知人が言いました。
「私あの本めっちゃ怖くて苦手なんですよ」
「なんか、人間の嫌なところ書かれすぎてて怖くて」
『イン・ザ・メガチャーチ』に感情を揺さぶられた勢いで、次に手に取ったのがこの『何者』でした。
朝井リョウ作品は『正欲』を最初に読んだのでこの作品は3作目だったのですが
いや~スゴイ。
なんで「知っている」んでしょう。観察力と言語化力に今作も大層衝撃を受けました。
読んでいる途中から明確に「あ、これ、面白い」と確信し、
そこからは最後まであっという間。
現実世界で見てきたあの人や、この人なんですよね。
知人が怖いと言っていたのも頷けます。知らないのに、知っている人たちのお話でした。
あらすじ(ネタバレなし)
就職活動を控えた大学生たちが、互いに励まし合いながらも、それぞれの本音と建前の間で揺れていく物語です。SNSの裏アカウントに書き連ねられた言葉が、徐々に人間関係の亀裂を生んでいきます。
直木賞受賞作。朝井リョウ作品の中でも特に「刺さる」と言われる一冊です。
「俯瞰席」の人間として読んだ
読みながら、私は知らず知らずのうちに主人公・拓人の視点で入り込んでいました。
物事を一歩引いて見てしまう癖、冷笑混じりに観察してしまう癖。頭の中で「あの人はこういうキャラだから」と勝手に評価して距離を置く感じ。拓人と「全然違う」とは到底言えなくて、読みながら静かに襟を正される気持ちになりました。
だからこそ強く感じたのが、光太郎という人物の眩しさです。
不器用で、他人からどう見られているか気にしながらも、それでも泥臭く打席に立ち続けている人間。完璧じゃないし、滑稽に見える場面もある。でも一歩引いた安全な場所から冷笑しているだけの人間より、遥かに立派だよなぁと思ってしまう。
私は「頭で色々考えているのに度胸が無くて行動が起こせない派」なので、胃が痛くなるシーンが多くありました。
あの人の「見え方」が変わる瞬間
この小説の上手さが一番出ていると感じたのが、とあるキャラクターの描き方です。
拓人視点でお話が進んでいくわけですが、物語が進むにつれて「本当に格好悪いのは誰なのか」という問いが静かに浮かび上がってくるわけです。
まさにどんでん返し。なんとなく頭の中で最後何かが覆りそう、みたいな予感はあったのですが気づいたら横から殴られたような心地でした。
これは是非読んで体感してほしい!
視点が少しずれるだけで、痛々しさが凄みに変わる。誰もが必死で、誰もが格好悪い。そういう人間の複雑さを、容赦なく解像度高く書いてくる。
『イン・ザ・メガチャーチ』を読んだときと同じ感覚で「なんでここまで知っているんだ」と何度も思いました。
自分を「分析されている」気持ちになるんですよね。
私は拓人視点で読んでしまいましたが、あのキャラやあのキャラに感情移入する人ももちろんいるんだろう。そういう人はどういう感想を抱くのか、興味があります。
読み終えて
私たちはつい、自分から見えているほんの一部だけでその人を「わかりやすいキャラクター像」に落とし込んで評価してしまいがちです。
でもその人自身は、もっと割り切れない複雑な要素でできている。
結局誰も、自分以外のことはわからないということを肝に銘じておきたいです。
冷笑という盾を構えて現実から一歩引いてしまいがちな人に、特に読んでほしい一冊です。
この小説が仕掛けたトラップに、正面から引っかかる体験をしてみてほしいなと思います。

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